夢の光景にはいつも幽かな調べが流れています。 どれほど急展開しようと過剰な乱れが生じようとも、薄明への思慕から遠のくことができないように、自然の理はおののきを袖に含みながら、とても穏やかな威厳を醸しており、それは不吉な予兆さえ、あらかじめの了解に委ねられているのか、ある純度が保たれ、静謐なまなざしを投げかけては、足場がゆるやかにさらわれてしまう恐懼から逃れる術を持ち得ません。 夜空へおぼろに浮かんだ森の闇は、月明かりを忘れてしまったのか、胸の裡に去来するのは夢特有の焦燥のみで、色彩をもたない情景を語る言葉は不断に吃音へと導かれてしまい、はたして誰に対してたった今、遭遇した魔物たちの跳梁を説明しようと努めていたのかさえ判然としないのです。 あいまいな夜の稜線がそうであるように、魔性の棲家も明確な位置をしめしてはくれず、ただ漆黒にとけあった電線の連なりがひどく端的な例えに結ばれる様相を呈すると