ドアチャイムの音がした。 ドアを開けるのももどかしそうに、すきまが開いた途端に男が「交換に参りました」と声を掛けてきた。いつもの営業の男だった。 男というよりも男性型と言うのが正確かもしれない。最近では自然な皮膚を露出している人はほとんどいない。体が退化してしまった人間は、生まれたときから頭しか成長しなくなっている。その代わりに人型のカプセル(ロボットのようなものだ)を使っている。 やってきた営業もまるでロボットだった。もちろん、それを迎える婦人も女性型のロボットのようだった。 いつの頃からか、衣服を身につける習慣はなくなっていた。それもそうだろう、体自体が装飾品のようなものだ。本来は人型である必要も無い。人間が使うように作られた機械や環境に合わせて人型になっているにすぎない。本末転倒なのだが、今は人型から変えようという人はほとんどいない。 一握りの人が特殊な形の「体」を使い始めてはいる。