ラボの自席で作業していると、部屋に戻ってきた先輩と目があった。 「飯食った?」と先輩が聞く。 「まだです。」「食わんの?」「食べます。」 この人とご飯を食べに行く際の決まったやりとりだった。 何を考えているのかよくわからない上に感情を表に出さない先輩だったが、ラボ生活が過ぎていくうちに「同じ人種」かもしれないと勝手に親近感を覚え、 進路や研究テーマ・手法に行き詰まった時によく相談に乗ってもらうようになった。 そうして3年ほど、お世話になった先輩は、3月で卒業する。 共有机でいつもの弁当を食べながら、ふと「この人の、LINEもFacebookもTwitterも何もかも知らないな」と気付いた。 そもそもやっているのかすら知らない。というかやらなさそうな人だ。インスタはやめたと言っていた。 こうやってご飯を食べてあの映画が良かっただの、このシンポはどうだったかだの、何も事は進まないがどこか身のあ