騎士見習いの専門棟へと移動する。その間も何やら色々と考えていたらしいルーフェンはハッとしたように顔を上げた。 「よし、今回は宝盗りディッターで勝負しよう! 最近は速さを競うばかりで、宝盗りは行っていないから、非常に楽しみだ。先生の若い頃は……」 ルーフェンがとても張り切っているようだが、ダンケルフェルガーを勝たせようというものではなく、ただ純粋にディッターをしたいだけのように見える。 大領地の寮監だし、一見何も考えていないように見えても、深謀遠慮があるのだろうか。それとも、ダンケルフェルガーが負けるとは全く考えていないのだろうか。 わたしの呟きにヒルシュールが軽く肩を竦めた。 「ルーフェンはおそらくフェルディナンド様の愛弟子であるローゼマイン様とディッターがしたくて仕方がないのでしょう。最奥の間で虚弱さに驚いていましたけれど、宝盗りディッターならば用兵の腕前については見ることができますから
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