昨年7月1日、自衛隊が創設60年で「還暦」を迎えたその日、政府は集団的自衛権行使を容認する閣議決定をした。そして、今年になって、安倍晋三首相が「戦後初めての大改革」という新しい安保法案が国会に提出され、大混乱の中で可決・成立した。その一連の過程を追いながら、私は隔靴掻痒(かっかそうよう)の思いを禁じ得なかった。自衛隊を取り巻く現実とはかけ離れたところで、空疎な議論が飛び交うように感じたから。「違憲か合憲か」という議論ですら、どこか別の世界の話のようだった。もちろん、自衛官にとってそれは、切実な問題であるのだけれど。 自衛隊のリアルを知ってほしい、と思う。巨大な実力部隊の来歴を知り、彼らが何に苦悩し、いま世界をどう見ているのか。それを知ることなしに議論はしてほしくなかった。いや、今からでも遅くない。彼らの現実を直視すれば、議論に血が通ってくる。本当にあるべき姿が見えてくると考えている。 結論
![「軍隊らしくなさ」と死を意識する組織 - 瀧野隆浩(毎日新聞社会部編集委員)|論座アーカイブ](https://cdn-ak-scissors.b.st-hatena.com/image/square/7b53529fa6ada00947637357cdb4c56dbbce627f/height=288;version=1;width=512/https%3A%2F%2Fwebronza.asahi.com%2FS2010%2Fupload%2F2015103000011_1.jpg)