21番染色体が3本になることによって引き起こされるダウン症では、白血病などの血液性のものを除くと多くの固形がんの発症が有意に低くなることが大規模な疫学的調査から証明されています。他に糖尿病性網膜症やアテローム性動脈硬化などの血管関係の病気が少ないことも知られています。 21番染色体上には231個の遺伝子があることが明らかにされており、その中に原因遺伝子があると考えられます。例の本でも言及してありますが、マウスでヒトの21番染色体に相当する16番染色体を3本持ったマウスを使って実験したところ、不思議なことにEts2というがんを作らせる原因として知られているがん遺伝子(発がん遺伝子、がん原遺伝子)が、過剰に働くことによってがんが起こりにくくなるという、一見不思議な論文が去年の一月に出ています。 Nature 451, 73-75 (3 January 2008) doi:10.1038/nat