東日本大震災と東京電力福島第一原発事故から5年が経過した。震災と事故の復旧は着々と進み、日本の底力、そして日本の人々の健全さ、優秀さを示した。同時にたくさんの問題も見えた。その一つがデマの拡散だ。 「福島が放射能で汚染され人は住めない」という誤った情報は、不必要な混乱を生み、人々を苦しめ、復興を遅らせた。今はそうしたデマも少なくなり、当時の発信者は無責任にも口をつぐんでいるために、問題は解消に向かっているように見える。しかし悪影響は残る。健康被害は起きないにもかかわらず、1mSv除染など過剰な放射線防護対策が行われ、復興や帰還を遅らせている。さらにはストレスによる住民の健康被害も生んだ。 写真は福島県富岡町で筆者が撮影した荒廃した避難区域と、除染で出た廃棄物の山の光景だ。こうなる必要はなかった。この不必要な現状は、デマによる過剰な心配が理由の一つだ。 デマ拡散者の行状を観察すると、彼らは反
福島の原発事故から4年半がたちました。帰還困難区域の解除に伴い、多くの住民の方が今、ご自宅に戻るか戻らないか、という決断を迫られています。 「本当に戻って大丈夫なのか」 「戻ったら何に気を付ければよいのか」 という不安の声もよく聞かれます。 福島県に努める医師としてこの帰還問題を眺めた時、まず、帰還する・しないという選択は、何の為に、誰の為にあるのか、という事を考えていただきたいと思います。帰還は国益の為でも地域振興のためでもありません。決断を下された1人1人の方が、その決断によって健康にならなければ意味がないのではないでしょうか。 帰還を決められた方、迷われている方が、今後放射能を正しく恐れ、正しく避け、そしてより健康になっていただくために、健康を守る医師という立場から考えていただきたいことが5つあります。 1.100ミリシーベルトは、がんに「ならない」値ではない。 「100ミリシーベル
チェルノブイリの経験とウクライナの世論 昨年11月、チェルノブイリ原発とウクライナ政変を視察するツアーに参加した。印象に残ったことがある。1986年の原発事故を経験したのにもかかわらず、ウクライナの人々が原発を容認していたことだ。 「原子力をどう思いますか」と多くの人に聞いた。すると誰もが自分の経験を長々と話し、簡単に賛成か反対かの答えを言わなかった。これは福島の人々と原発事故の体験を話し合った時と同じだ。経験が重すぎ、生活に密着すると、語ることが多すぎてしまうためだろう。そして、ほぼ全員が原子力への否定的な意見を述べながら、当面の利用を容認していた。 チェルノブイリ事故の被災者で、避難指示地域に勝手に戻ってしまった77才の男性は語った。「原子力には反対だが、電気が必要な以上は仕方がない」。事故当時、大学生だった50代のガイドは語った。「ロシアに運命を握られたくない」。この人は事故情報で、
(GEPR版) 東日本大震災で事故を起こした東京電力福島第一原子力発電所を5月24日に取材した。危機的な状況との印象が社会に広がったままだ。ところが今では現地は片付けられ放射線量も低下して、平日は6000人が粛々と安全に働く巨大な工事現場となっていた。「危機対応」という修羅場から、計画を立ててそれを実行する「平常作業」の場に移りつつある。そして放射性物質がさらに拡散する可能性は減っている。大きな危機は去ったのだ。 ただし、ここまでの徹底した工事が必要なのか、そして東電がこの巨大工事を続けられるのか。働く人の士気と資金の問題からやがて行き詰まりかねないという隠れた問題も現地で見えた。 写真1・使用済み核燃料の保管プール崩壊が懸念された4号機の建屋内部の様子。耐震工事が終わり、プールが補強され、取り出し作業が進む。見学者は防護服、マスクを着けて視察する。今回14年5月の取材で。(写真提供・No
厚生労働省は原発事故後の食品中の放射性物質に係る基準値の設定案を定め、現在意見公募中である。原発事故後に定めたセシウム(134と137の合計値)の暫定基準値は500Bq/kgであった。これを生涯内部被曝線量を100mSv以下にすることを目的として、それぞれ食品により100Bq/kgあるいはそれ以下に下げるという基準を厳格にした案である。私は以下の理由で、これに反対する意見を提出した。 震災後の日本人に最も必要なものは、絆の復活だろう。事故直後から、あえて福島産の農産物を買おうとする運動も起きた。一部の消費者は、被災地の食品を買うことに価値を見出している。基準値を引き下げることは、農水省が掲げる「食べて応援する」活動を否定することに繋がる。 賠償金を払えば新たな被災者ができないと、読者は思われるかもしれない。しかし生業を否定された不幸はお金では償われない。また、農家や漁師が補償されるとしても
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