「わが国は、昔から農耕社会であり、 有史以降、肉食の習慣は薄いとされている。・・・ 有史以前のわれわれの祖先は、 狩猟と採集によって生きてきたことは間違いない。 農耕文化が広まるにつれ、「狩猟民族」が次第に減少し、田畑だけでは食べていけない山奥にだけマタギが残りえた。 その最後になったのが、阿仁マタギだと言えると思う。・・・ 彼らの持ついわばマタギ文化は、奇妙なほどに特殊なものだ。 農村社会とマタギ社会とを比べると、その特殊性がはっきりしてくる。 組織的には、農村社会のリーダーはごく最近まで裕福な地主に限られていたが、 マタギの場合は、あくまでも実力主義だ。 信仰の形態も山神が中心となり、農村と比較してひどく禁欲的だ。 山岳宗教との結びつきの深さがいたるところに見られるが、 それがなおさら神秘性を深めている。・・・ マタギ言葉に象徴される排他性、多くのタブーに秘められた宗教性、・・・ まだ