2010年6月27日のブックマーク (3件)

  • 傘をひらいて、空を

    僕の生家では、盆正月に親戚の集まりがある。僕はそのどちらかには行くことにしている。東京に出て三十年、いくつかの試行を経てできた習慣である。行きたくて行くのではない。後ろめたいから行くのである。 両親は僕を適切に養育したと思う。弟とも悪くない仲だと思う。親戚の人々も(少なくとも露骨に加害的なふるまいをしないという意味において)、良い人たちだと思う。そして、それらとは関係なく、僕は他人といるのが好きではない。 僕の言う「他人」は僕以外のすべての人間をさす。 会議室の隣の椅子に人が座っている状態がわずかに苦痛である。電車に乗らずに済むことを優先して住居を決めている。個室に単独でいる状態がもっとも息がしやすい。 十年単位で馴れた相手であれば、さらにそれが頻繁でないならば、半日程度一緒にいることに支障はない。両親や弟、亡くなった祖父母、それから少数の友人たちがこのカテゴリに入る。それ以外の人間との同

    傘をひらいて、空を
    waniza
    waniza 2010/06/27
  • おれに関する噂 - 傘をひらいて、空を

    彼は見て見て、と言い、一枚のプリントアウトを差しだした。私はそれを熟読して、すごいねえと言った。人の奥さんに手を出すなんて、意外ともてるんだねえ。あと悪いことしてお金いっぱいもらってるみたいだから今日おごって。 彼はふふふと笑ってその紙を元通りに折りたたみ、フォルダにはさんでから鞄に仕舞った。いやあ、先輩から聞いてはいたんだ、この仕事をしていると十人に一人は匿名で悪口を書きたてられるって、あ、ここに書いてあることはみんな嘘だよ、言っておくけど。 彼はそう言い、そうかあと私は言った。少し残念だった。せっかくの怪文書だ、少しは真実が含まれていてほしい。 一緒にいた彼の彼女は長いため息をつき、この人はどうしてこんなにうれしそうなのかしら、と言った。彼女は私に訊いているふりをして、ほんとうは彼に訊いている。私はそういう触媒みたいな役回りが嫌いではない。 私は少し考えてこたえる。人はその内容の善し悪

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  • 食の安全と環境−「気分のエコ」にはだまされない - NATROMのブログ

    の安全と環境−「気分のエコ」にはだまされない(シリーズ 地球と人間の環境を考える11) 松永和紀の新刊。ちなみに、和紀は、「かずのり」ではなく、「わき」と読む。書のサブタイトルは『「気分のエコ」にはだまされない』。「気分のエコ」については、具体例を出すのがいいだろう。地産地消、つまり地域で取れた品をその地域で消費することは「エコ」であると、一般的には考えれられている。確かに、遠くの外国から輸入するのと比較して、地産地消では品を輸送するための燃料は少なくて済みそうだ。しかし、以下に引用する事例は、まったく「エコ」にはなっていない。 たとえば、ある中国地方の団体が、地産地消活動の一環として、地元産のコメをレトルトパックのご飯にして売ることにした。だが、ご飯のレトルトパックは地元産業では作れないため、関東地方の企業にわざわざ地元のコメを持ってゆき加工したそうだ。「地産地消」の名目で、コ

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