最近のウクライナ情勢の背景をよく理解するためにいくつか関連書籍を読んでいる。その中の一つ、元ゴルバチョフ政権で外交の実務を担当していたドミトリー・トレーニン氏の「ロシア新戦略――ユーラシアの大変動を読み解く」が充実の内容でとても参考になる。2012年の本です。 ウクライナについても、示唆に富んでいる。 二〇〇〇年代央ウクライナにおける政治的な変容は、ロシア、そしてそれぞれの差はあっても旧ソ連諸国のほとんどで存在していた統治形態からは、明確に差をつけていた。悲しいことに、こうした貴重な財産は、二〇〇五~〇九年に浪費されてしまった。オレンジ革命の立役者だったユシチェンコ大統領とティモシェンコ首相の間に権力闘争が起きたからである。既得権益奪い合いのなかで、ウクライナを改革するという事業は後景に退いてしまった。二〇〇四~〇五年の過程で大統領になりそこねたヴィクトル・ヤヌコーヴィチが、二〇一〇年の大