「会社のロゴなんですけど、こんなのどうでしょう」 弘毅くんがプリントアウトを差し出した。反応をうかがうような表情が意外に可愛い。けれど、カワイイなんてボキャ貧すぎるし、もちろん成人男子に向かって言うのは失礼だから口にはしない。 「おお」 声を挙げたのは〈社長の〉旭山さんだ。 そこには、ニワトリの赤いトサカをデフォルメしたらしい赤いギザギザが描かれ、それに重なるように黒くしっかりした字体で「alternative zero」の文字が重ね描きされていた。 赤い鮮烈なギザギザと黒く太いフォント。 精悍で、斬新で、そして強さを感じさせる。 「カッコイイじゃないか。どうしたんだ、これ。楠原がデザインしたのか」 「まさか。僕、美的センスはゼロですから。大学時代の友人で建築学科のやつに頼んでデザインしてもらったんです」 「そっかぁ、テスタ・ロッサね、これ」 「ええ、旭山さんのヨットの名前です。初めて諸磯