精神現象学(原著は1807年) Phaenomenologie des Geistes 訳注付き全訳は2つしかありません。 1, 金子武蔵訳「精神の現象学」(岩波書店、上巻は1971年、下巻は1979年) 金子は生涯に3度、これを訳しています。生涯をこれの翻訳に捧げた人です。それが、可能な限りの文献を繙いて調べた努力に出ています。内容的には、特にイポリットの仏訳及び『ヘーゲル精神現象学の生成と構造』から多くを学んでいます。 原語を活かした訳語を創り出した点にも特徴があります。文脈の理解にやや難点がありますが、ドイツ語の理解も内容の歴史的背景の理解も正確です。不滅の訳業と言えます。日本における「精神現象学」研究の到達点を示すものです。 訳者が明治の人ですから、文体や単語が少し古くて今の人達にはとっつきにくいでしょうが、「精神現象学」の研究には不可欠のものです。これを参照しなかったために失敗し