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ブックマーク / delete-all.hatenablog.com (8)

  • あの夏、地上最大のオッパイが。- Everything You’ve Ever Dreamed

    ピーチジョンのエロティックな広告写真。ホームに滑り込む電車の騒音をバックミュージックに、それを舐めるように見ている僕の後ろを一人の淑女が通り過ぎて行った。振り返り横顔を見る。間違いない。彼女だ。あの夏、僕の人生を、僕の未来を変えてしまった地上最大のオッパイの主。ヴィーナス。声をかけようとしたが名前を思い出せなかった。あれほど追い求めた存在であったのに。 1991年の夏。高校三年生だった僕と悪友の西ヤンは腐っていた。真面目にやっている連中、反抗している連中、すべてを斜めから見ていた。授業。夏期講習。体育祭の創作ダンスの練習。すべてをサボタージュして大半の時間を第二校舎の屋上で潰していた。僕らは屋上を「ヘヴン」と名付けて、毎日のように、流れていく雲や富士山のシルエットを眺めたり、昼寝をしたり、買ってきたエロを模写するという意味のない行動をしていた。空は青く、太陽の陽射しは心地よかった。いつか

    あの夏、地上最大のオッパイが。- Everything You’ve Ever Dreamed
  • 僕のカイシャ、ダメ。ゼッタイ。- Everything You’ve Ever Dreamed

    得意先での打ち合わせの後、先方の担当者と少し談笑した。仕事以外の話題が主の気楽な会話。仕事が順調にいっているときってこんなものだ。別れ際に彼は言った。「御社の部長、もう連れてこなくていいですよ」ハイ?返事の声が上ずった。 「顔が暗いし、あの目がね。睨まれてるみたいで恐いんですよ。それに話の意味まるでわからないから」スミマセン。申し訳なさそうな顔をしておいた。営業としての心得を僕が教授しないといけないななんて思いながら。「それとご人は意識されてないと思うのですが『ナルヘソ』って言われると馬鹿にされているみたいで正直不快です。今後はフミコさんだけでいいですよ」…了解しました。そう答えて会社へ帰った。仕事自体は順調。それだけが救いだった。 午後五時。月次定例営業会議が行われた。会議というだけで憂な気分になる。いつものとおりどうでもいい会話が展開した。僕はいつものとおりウンウンと頷きながら聞き

    僕のカイシャ、ダメ。ゼッタイ。- Everything You’ve Ever Dreamed
  • はやくぶっかけて - Everything you've ever Dreamed

    職場の飲み会があった。金曜の夜ということもあって、雑居ビルの二階にある居酒屋は、満席で、騒然としていた。遅れて到着した僕は、その店の騒がしさと派手な看板にげんなりする。何がそんなに楽しいのだろう。ここは天国なのかい?この暖簾の向こう側に、しあわせは、あるの? 乾杯をして宴会がスタートした。続々と料理が運ばれてくる。大皿の料理を小皿にわけるのが、端の席に着いた僕と総務のマヤちゃんの役目になった。テーブルの端というのはそういう席だ。マヤちゃんは仕事では見せない器用さを発揮して、丁寧に、手早く、サラダを取り分けていく。水菜の緑とオニオンの白。色取り鮮やかなサラダが小皿に作られていく。プチトマトがそれぞれの頂にちょこんと置かれているのが可愛らしかった。終始、その作業は迅速だった。効率化されていたというべきか。 普段のぶっきらぼうからは想像できない、意外な才能に感心しながら、手先を観察していた僕に、

    はやくぶっかけて - Everything you've ever Dreamed
  • 会社ってキモティー! - Everything You’ve Ever Dreamed

    会議があった。月次定例営業会議。面子は僕を含めて総勢8名。会議室に勢揃いした顔ぶれを眺めて暗い気分になった。この面子で会議を行い、話がまとまった例がない。各々が人の話を聞こうとせず、勝手に話すからだ。明確な議題がなく、論点が曖昧になっている側面があるにしても。 会議が始まるとすぐに脱線の連続になった。予想通りの展開。流れる時間、押し寄せる眠気。僕は眠気に対抗するため、それぞれの主張にメモを取りながら耳を傾けることにした。ウンウンとわざとらしく頷きながら。 「逆にいえば…」僕は発言者の苗字に続けて「逆」と書いて丸で囲い、発言の要旨をメモした。「裏を返せば」「裏」と書いて苗字と要旨をメモ。「裏」を丸。意見が裏返ったという意味の矢印を横に添えた。視覚に訴えると理解しやすいからね…。 「逆に…」「裏を返せば…」「逆に…」「裏を…」「所謂」「要するに…」「極論いうと…」「逆に…」「裏を…」「いわゆる

    会社ってキモティー! - Everything You’ve Ever Dreamed
  • 僕らは毎日チェリオを飲んでいた - Everything You’ve Ever Dreamed

    商談はうまくいかなかった。不発弾を抱えたような心持ちで地下街から出ると霧雨が街を覆っていた。むししとした湿気から逃げ、飛び込んだ先はゲームセンターだった。ネクタイを緩め、空調の効いた空気を襟元に入れながら周りを見渡した僕は久しぶりに訪れた「ゲーセン」の様変わりに驚いた。二人組の女の子やカップルがいるなんて。 僕と西ヤン。僕らは悪友だ。「悪友」の上に「ワル」と格好のいいルビを戴冠させたいけれど、どう贔屓目にみても僕らはただのボンクラだった。正義感と想像力だけが暴発していた。「10年後の1999年に世界は滅びるというのに何で皆は平気な顔をしていられるんだ!」という壮大かつバカな熱意だけで「二酸化炭素友の会」を結成し、授業をサボって校舎裏の樹木にハーハー息を吹き掛けているところを発見され体育教官室に羽交い締めでひきずりこまれたりしていた。意味のわからないままに聴いていたフランク・ザッパの音楽が僕

    僕らは毎日チェリオを飲んでいた - Everything You’ve Ever Dreamed
  • エマージェンシー!オッサンをなんとかして! - Everything You’ve Ever Dreamed

    地元の青年会は季刊紙を春、夏、秋、冬と年四回発行している。僕は青年会書記代理という要職に就いているので、こないだの日曜の午後はその季刊紙の「夏の号」打ち合わせに参加していた。夏。もう夏なのだ。そういえば暑い。僕がぼうっとしているうちに空気は初夏特有のカラっとした熱を帯びていた。 公民館のいくつかある中会議室の一室を貸し切り、折り畳み式の長テーブルを4つ正方形のカタチに組み合わせ、パイプ椅子を並べ、即席の会議場を仕立てた。メンバーは会長オッサン、会計オッサン、書記オッサン、お祭り部長オッサンと謎のオッサン1号、2号とオッサンV3と僕の8名しかいないので、普段は週末の社交ダンスの練習場にも使われる広さを持つ会場は少々大袈裟かもしれない、なんて思いながらパイプ椅子を並べていた。 恐るべし。全員が着席した瞬間にこれだけのスペースがオッサン特有の臭いで充たされるのだから。オッサン恐るべし。何もいわず

    エマージェンシー!オッサンをなんとかして! - Everything You’ve Ever Dreamed
  • 「あててんのよ」ってな調子でオッパイを押し付けられた! - Everything You’ve Ever Dreamed

    待ち合わせは午前九時。東京の足といえば地下鉄だ。ホームに滑りこんでくる満員の地下鉄にため息が出そうになるが、気を取り直して人のかたまりに背中をねじ込み乗り込む。一息つくと体の前面にひんやりとしたドアの金属的な冷たさを感じた。湿気で曇った窓をこすって外をみた。時折、パイプのようなものの影が左から右へと飛び去っていくのが見えた。その影は、あの冬の日に振り返ることなく去っていった恋人を想わせた。カタンコトン。街の下を地下鉄は走った。 どれくらいの時間が経ってからだろうか。背中に異変を感じたのは。主は来ませり。僕の背中に押し付けられていらっしゃる聖なる存在。主は来ませり。この世に生を受けて以来追い求めてきたもの。スプリングコートを羽織っていても間違えることなどあろうはずもない、全てを柔らかく包みこむ大いなる存在、オッパイ。 脳内戦闘ナビゲーターが絶望的な戦況を告げた。「戦闘力(バスト)95!戦闘レ

    「あててんのよ」ってな調子でオッパイを押し付けられた! - Everything You’ve Ever Dreamed
  • 甲殻のガールフレンド - Everything you've ever Dreamed

    奇蹟なんてそう滅多に起きるものじゃないなんてことは僕にだってわかっている。たとえば大事故のニュース。生存者の見込み無し。「無し」。わかってる。そんなことは。でもさ、そんなとき、一人でも、一人でいいから救われて欲しいと思う。暗いニュースを見るたび、そんな奇蹟が起きるのを僕は信じてやまない。 昼、天津丼をべていた。卵にとじられた蟹の欠片を箸で持ち上げ、口に運ぶ。味の染みたご飯をかきこむ。そんな事の最中に、ふと、蟹を飼おうと思った。川原にいる地味な奴や、アメリカからやってきた海老っぽい面をした奴じゃなくて、ズワイかタラバ。個人で飼育できる生き物なのかどうかは知らないけれど。そして卵から孵った子ガニ達を海へ放つんだ。 挨拶に毛が生えたようなメールを送ることなく消している。送り先のアドレスと電話番号を自棄になって消してしまったせいで送れないのだ。お酒が入るとそんなことを忘れてしまう。いざ送信しよ

    甲殻のガールフレンド - Everything you've ever Dreamed
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