「基準率」派とは、あるシナリオが起きる確率を推定するために、まずその事象がこれまでどの程度の頻度で起きてきたのかを見る一派だ。つまり、その事象が起きる基準率を見るのだ。ここ数十年の歴史を振り返っても、大きなパンデミックは稀だ。 SARSとエボラの流行は、すぐに終息した。HIV/エイズは、新型コロナウイルスと性質が大きく異なる。1957年の「アジアかぜ」や1968年の「香港かぜ」といったインフルエンザの流行は、もはや遠い記憶である。 「基準率」派は、新型コロナウイルスの感染者数が指数関数的成長の曲線を描いていることを無視しているわけではない。ただ、最悪のシナリオが起きる確率は低いと考えるのだ(たとえなぜそう考えるのかを明快に説明できなくても)。 「基準率」派は、世界をモデルに還元して考えること自体に無理があり、モデル内の変数もどうせしばらくしたら変わってしまうと達観しているのだ。そのため、分