『さらば愛しき女よ』(Farewell,My Lovely/1975) レイモンド・チャンドラー。登場人物の心理を主に台詞や行動で描写するハードボイルド文体に、知性や洒落たセンスを取り入れた書き手。ハリウッドの空気やロサンゼルスの風景、そこに生きる人間模様といったリアリズムを貫き、世界で最も有名な私立探偵フィリップ・マーロウの生みの親。 その味わい深い世界は、今も7つの長編でじっくり楽しめる──『大いなる眠り』(1939)、『さらば愛しき女よ』(1940)、『高い窓』(1942)、『湖中の女』(1943)、『かわいい女』(1949)、『長いお別れ』(1953)、『プレイバック』(1958)──ページを1枚ずつめくっていく至福感。ページが残りわずかになると、親しい友人や恋人と別れなければならないような寂しさにも包まれる。そんな気持ちにさせてくれるのがチャンドラー作品であり、マーロウの物語だ。
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