ロックには、二つの大きな源流がある。 たいていの文献には「黒人のリズム&ブルーズと白人のカントリーの融合」と記されている。ロックンロールという肉体を揺さぶるような音楽が1950年代半ばに誕生し、当時の白人のティーンエイジャーに強く支持され、それが1960年代半ばにはロックとなって体制や大人への対抗文化となり、次第に若い世代のライフスタイルには欠かせないサウンドトラックとなっていく……そんなところだ。 しかし、もう一度話を戻そう。 リズム&ブルーズの前にはブルーズという、想像を絶する苦難と労働を歩み続けた黒人たちの「心の叫び」があった。一方のカントリーとは、元々はマウンテン・ミュージックやヒルビリーと呼ばれ、祖国を追われてアメリカ東部のアパラチア山脈周辺のスモールタウンや村落に住み、同じように厳しい環境で貧困生活を余儀なくされたアイルランド系移民たちに根付いた「孤高の響き」だった。どちらも商
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