『イングロリアス・バスターズ』(Inglourious Basterds/2009) クエンティン・タランティーノ──映画・音楽・コミックなど膨大なポップカルチャーを吸収分析するコレクター気質と、それを消化して創作活動へと変えていく作家性を併せ持ち、誰も見向きもしなかったB級感覚をメインストリームに昇華させることのできる希少な監督。 日本でも新作『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』が公開されたばかり。マンソン・ファミリーやシャロン・テート殺害事件などロックファンにはお馴染みの題材を書き換えながら、レオナルド・ディカプリオとブラッド・ピットという夢のコンビを実現させ、相変わらず熱狂的な映画オタクぶりを発揮している。 だが書き換えという点では、『イングロリアス・バスターズ』(Inglourious Basterds/2009)の方が凄い。ナチスやヒトラーを映画館ごと炎上爆破するとい