∂鈴木大札は、Zenを世界に紹介した。本書は、人間大拙の思想遍歴について、過去・当時あるいは未来のさまざまな人々との交流のありさまを活写しつつ、大拙の思想のポイントをわかりやすく(繰り返し)、解き明かしてる。著者安藤礼二氏の知的センスと力量に脱帽。 本書に登場する人物は、ポール・ケーラス、W.ジェイムズ、エックハルト、スエデンボルグ、スピノザ、ライプニッツ、老子、柳宗悦、南方熊楠、岡倉天心、ジョン・ケージ、井筒俊彦、ビアトリス夫人、さらには現代思想家であるカンタン・メイヤスーにまで及ぶ。なかでも、故郷石川の盟友である西田幾多郎との思想交流が、濃密に描かれている。 大拙は、明治、大正、昭和という3つの時代を生き抜いた(1870年-1966年)。 日本語と英語を自在にあやつり、古今東西の思想に通じていた大拙がめざしていた東洋的なるものは、偏狭なナショナリズムとは一線を画するもの。 明治維新以降