2 ピアノ文化とノクターン (1)ペダルの美学 ノクターンの表現において欠かせないのが、左手の分散和音の表現です。この左手による広い音域の分散和音の伴奏は古典派の音楽には見られません。そのなかで、注目されるのがモーツァルトです。きわめて叙情的なピアノ協奏曲第21番の第2楽章の表現は、その後のノクターンを暗示しております。左手の分散和音のゆったりとした伴奏は、ペダルの表現と密接に結びついています。さらに、ピアノ協奏曲第27番第1楽章でもこのような表現を耳にすることが出来ます。このモーツァルトの弟子が、ショパンに深い影響を与えたフンメルであったことは重要です。モーツァルトの緩徐楽章は、ノクターンの一つの原型となっていると考えられます。 緩徐楽章の表現の点ではベートーヴェンも重要な貢献をしています。ベートーヴェンの緩徐楽章の情緒纏綿たる表現はロマンティックな詩情にあふれています。この表現は、サ