柳田國男の昭和6年の論文に「世間話の研究」がある。 「世間話」は80年代に流行した都市伝説に対応する民俗学の側の術語として理解されがちだが、いつも注意を促すように、この論文は『綜合ヂャーナリズム講座 第11巻』(雑誌ヂャーナリズム、記事篇、昭和6年10月20日、内外社)に収録されているものだ。柳田の文章がしばしば誤読されたり、難解に思えるのは、その論文が発表された時代背景や掲載誌といった「文脈」を無視するからであり、柳田という人は常にその時点での文脈の中に過度に寄り添って論述するのが特徴である。従って、怪談や都市伝説的世間話論への関心から読もうとする限り、「世間話の研究」は殆どその主旨を読みとれない。今、紹介した掲載されて叢書の名と巻の主題から、まず、これはジャーナリズム論であり、そして「記事」のあり方をめぐってのものである、と承知しなくてはいけないのである。 それでは何故、この時期、柳田