本棚を見れば、その人の知的好奇心が地図のように見える、と思う。 むかし、本棚を経由して恋に落ちたことがある。 その日は、昼間のサッカーの試合をみんなで見ようとその人の家に集まった。新宿から数駅離れた小さな駅にある1DK。深いブラウンとネイビーが基調の部屋の端っこに、やけに幅を取って佇んでいる本棚に目をやったとき、どんどん気持ちが引き込まれていったのを覚えている。 その人の本棚には、学術書、ビジネス書、趣味の本、歴史の本、おそらく尊敬するタレントの本が並んでいて、私はすぐに「左脳と右脳のバランスがいい人だ」と思った。私は左脳と右脳のバランスがいい人が好きなのだ。 「ちょっと。恥ずかしいからジロジロ見るのやめろよ」 友人たちにコップを配り終わると、彼は私に笑ってそう言った、けれど、私は本棚から一ミリも目を離さなかった。彼が本棚の目の前に正座する私の隣であぐらをかく。ビジネス本も、戦略からマーケ