村田沙耶香の書くヒロインは往々にしてどこかズレていることが多い。多くの場合小さいころのトラウマ(性的なものが多い)やあまりよろしくない家庭環境の影響を引きずったものであることが多く、自身の性的な衝動でたまりたまった鬱憤を解消していく。それが攻撃的であり、暴力的になることも珍しくない(『ギンイロノウタ』や『しろいろの街の、その骨の体温の』など)が、ではそれは彼女たちだけが悪いのか? というと、もちろんそうではないだろう。表面的には見えてこないものにこそ、すべての原因はある。 それなのに、きっと彼女たちは表面的にしか理解されない。彼女たちが他人に理解してもらえないかのように振る舞うせいかもしれないが、かといって、というアンバランスでもろく壊れやすい日常を、村田沙耶香はずっと書いてきた。「殺人出産」や「消滅世界」のようなSFテイストを盛り込んだ小説にしても、仮にある規範が日常化された場合の社会を