今年の米アカデミー賞やゴールデン・グローブ賞でブリー・ラーソンに主演女優賞をもたらした『ルーム』は、すばらしい演技合戦だけで2時間をもたせてしまう映画だ。誘拐監禁された女性ジョイ(ブリー・ラーソン)は犯行当時まだ高校生だった。ジョイは監禁された納屋で犯人から肉体関係を強要され、赤ん坊を産んだ。映画は子のジャックが5歳の誕生日を迎える朝から始まる。ジャック役のジェイコブ・トレンブレイ君の演技力が母役のブリー・ラーソンに輪をかけて高く、母子の緊迫した演技合戦に引き込まれずにいることは難しい。 演者の演技を最大の魅力とする本作にはしかし、短所もある。いや短所というより、映画としての倫理が弱いと言った方がいいかもしれない。どういうことかを少し説明したいと思う。 誘拐監禁された母子の脱出劇というのは、スリラーやホラーなどのジャンル映画にふさわしい奇想である。その点では、日本漫画を韓国のパク・チャヌク
![荻野洋一の『ルーム』評:“感動させる”演出に見る、映画としての倫理の緩み](https://cdn-ak-scissors.b.st-hatena.com/image/square/90221982d823a78d5d0a889a67d85e9073604153/height=288;version=1;width=512/https%3A%2F%2Frealsound.jp%2Fwp-content%2Fuploads%2F2017%2F05%2F20160109-ROOM-main_th.jpg)