残念なことに世界は今も、平和ではありません。私達の住んでいるこの世界は、一向に無くなる気配のない、差別と偏見で満ち溢れています。今日も世界のどこかでは、人はその性別が故に攻撃され、人はその信仰が故に攻撃されます。人種、国籍、性的嗜好、時としては支持政党や学歴、収入の低さまでもが、謂れなき攻撃の理由となります。 数字の上では、統計の上では、私達は人類の歴史上最も幸福な時代を生きています。乳幼児の死亡率は下がり、多くの国において女性を含めた一般市民は選挙権を得て、人種や出自による偏見や差別も、最も改善された時代です。 けれども、そんなものは、あくまでも数字の上の話です。ビル・ゲイツのように納税の義務を回避しながら蓄財し、脱税の一環として慈善事業を行うような類の人々が、「私達は人類の歴史の中で最も幸福な時代に生きている」と喧伝しているのです。確かに、それは事実でしょう。数字の上ではそうでしょう。