それでもえらいもので,練習していると次第にそれらしくなってきた。半年も経つと,同級生どうしで比べあったものである。そのときに使った単語が rot(赤い)である。これには理由がある。私たちにドイツ語を教えたドイツ人の先生は,ゲーテの “Heidenröslein” を私たちに歌わせた。ウェルナーの曲もシューベルトの曲も “rot” のところは高音で長く伸ばす。一番目立つ R で印象に残っていたのである。 いま改めて "Heidenröslein" の詩を見返すと,かの先生が我々にこの歌を歌わせた理由がおぼろげながら分かってきた。Röslein という単語である。ドイツ語独特の R とÖ の発音に加えて,語頭の R,語中の L を練習させようとしたのではないか。 その後アメリカに行って,最初 R と L で苦労するというお決まりの経験をするわけであるが,そのときに思い切って学生時代に鍛