フィルムでなく、映像と音声のデジタルデータで作品を上映できる設備を導入する映画館が増えている。今や写真もデジタル、テレビもデジタル。では、フィルムを映写機で回してきた映画の世界は今、どうなっているのだろうか。(石原真樹) 今年十月、映画のデジタル化がどこまで進んでいるかを象徴するような出来事があった。封切りを控えた若松節朗監督の「沈まぬ太陽」(東宝配給、公開中)のデータファイルが、上映する四十の映画館に“配信”で届けられたのだ。 ネットワークを介し、暗号化された作品のデジタルデータを映画館側がダウンロードして上映に使う、邦画では初の試み。手間ばかりでなく、フィルムのプリントや輸送のコストも省くことができる。製作した角川映画企画製作部の岡田和則プロデューサーは「上映時間が長ければ、それだけフィルムのプリント代がかかる。長尺ものはデジタル向きかもしれない」と話す。