「読書界のロックスター」と全米で崇められるシアトルの図書館司書、ナンシー・パール氏。彼女がアマゾンと提携し本を出版する、というニュースが伝えられた2012年初頭、シアトルでは「裏切り者」と怒りの声が沸騰した。 シアトル公立図書館を定年で去った後も、あらゆるジャンルの本について語る膨大な知識と愛あふれるトークで、全米で愛される存在になったパール氏。そんな彼女を、シアトルの、とりわけ独立系書店で働く人々は誇りに思ってきた。 それなのに、よりによって、書籍市場の構造を抜本から破壊したアマゾンと提携するなんて。パール氏を模した「フィギュアを燃やす」といった過激ツィートも飛び交うほどの怒りは、愛情の裏返しなのだが、パール氏にも言い分はある。