コーエン兄弟の「ノーカントリー」を地元のシネコンで見たのは、土浦の駅頭で24歳の男が無差別殺人を引き起こす一週間前だった。 もし、事件が起きた後だったら、スーパーの袋をぶら下げた主婦が行き交い、土浦と同じような日常風景の中にあるシネコンで、こんな映画はとても見る気にならなかっただろう。 映画「ノーカントリー」の舞台となっているのも、殺人事件などとは縁遠いはずの、メキシコの国境にほど近いテキサスの、のどかな田舎町だ。米国も日本も映画の世界だけではなく、日常の時間が流れている郊外の町中で、凄惨な無差別殺人が起きる時代になってしまった。 「ノーカントリー」に先立って、2002年にマイケル・ムーア監督が、コロンバイン高校で起きた銃の乱射事件を題材に「ボウリング・フォー・コロンバイン」という作品を制作した。この作品でも無差別殺人が、主題になっていたが、メッセージの中心は、銃が野放しの「銃器天国」とし