子どもが持つ矛盾についての物語である。 小学4年生、すなわち10歳になる夏目礼智とそのクラスメイトたちの物語だ。 「子供の頃から大人だった。」という印象的なモノローグではじまる。 夏目礼智は、すでに小さな子ども時代から自分の行為の意味するところを知っていた、とおそらく礼智自身が述べるのだ。そして、自覚していたということを本人以外は知らなかったのだという。だから「ぼくだけが知っている」ということなのだ。 「知っていた」とはどういうことだろう。しかも「ぼくだけ」。 大人になってから振り返ったようにも読める(小学4年生のあの時までは、みたいなセリフ)が、子どものその時点(3歳なら3歳)で「知っていた」ようにも読める。 言語化できない形で子どもは「知っている」。 それは言語化できないので外在化されず、「ぼくだけが知っている」のである。 しかしその「知っている」というのは大人が言語化して知識化・概念