私は現在、焼肉店の料理長をしていますが、お客様に、「出荷の直前までちゃんと歩けて運動できている牛ですから美味しいですよ」とリコメンドすると、え? 歩けるのが素晴らしいの? ほかの牛はどんな? という質問が返ってきます。 サシのたくさん入った霜降り肉の牛には、太って歩けなかったり、糖尿病のような症状で目が見えなくなっていたりする牛がいるのです。無理に太らせているから病気になりやすく、予防のために薬もやたら打つことになります。 牛舎の中にギュウギュウ詰めなんてシャレにもならないことで、よくネットで写真が回ってきますが、フォアグラになるガチョウ小屋と変わりません。 どんな牛でもこういう無理をさせれば霜降りになるのかというと、実はそうではないのです。 もともと、日本の黒毛和牛は赤身に脂が入りやすかった。そこに肉牛農家の方々が工夫に工夫を重ねて、サシの割合を増やしていった。そういう経緯があります。