ここ数年、私が使うのを避けている言葉がある。「社会人」がそれである。この言葉は、「社会人として〜」という使われ方をする。人が(私も人である)「社会人として〜」と言っているとき、この「社会人」とはいったい何を意味するのだろうか? 「社会人」こそ無意味な思考停止キーワードである。それは、「サラリーマン」と言っているのと同じ程度の意味しか持たない。試しに、「社会人として〜」を「サラリーマンとして〜」に置換してみるがよい。その言葉があまりにも何も定義しないことに驚くだろう。 「会社に遅刻をしてはいけないよ」と、私はよく上司に言われたものだ。まだ若く世間知らずだった私は、当然の疑問として「なぜ遅刻をしてはいけないか?」と問うた。上司の答えは「社会人として」だった。若者は(私も若者だった)これでは納得しない。 この上司は、「遅刻をすると約束の相手の時間を無駄にすることになる。誰もが他人の時間を無駄にし