椹木野衣が岡本太郎「今日の芸術」以来の衝撃と評した一冊を手にする。 これでも俺を無視するのか、と言わんばかりに内情を切々と告白している。時間をかけたせいか実に読みやすく整理された文章になっていた。クリエイターを名乗っている人間のほとんどがこのわかりやすいメッセージに同調し、彼を好きになるのだろうが、いや表面では冷静を装っていても、あの熱情のこもったシンプルな激論に作り手ならば心を洗われるのは当然である。この国の安寧で幼稚な芸術業界に対する憤り、似非アーティストたちの個人主義の履き違えに対する怒り、それらを全て自らの芸術に放出することで世界的な評価を得たという事実に僕たちは反論する権利もない。ただそんな内的な心情を知った今でもあえて僕が彼を無視したいと思う所はただ一つ、日本に確固たる芸術フィールドを設けようとする意気込みだ。欧米のような俯瞰型の芸術システムを日本に設ける必要が本当にあるのだろ