その昔、法学者は法条文へのアクセスについてまったく無頓着であった。六法出版社が自社六法の採用を見込んで法学部の教員に競って寄贈していたため、「法条文へのアクセス」などという問題意識を法学者が持つはずはなかった。こうした恵まれた環境にいると、法情報学というような学問領域への関心がそもそも育たなかったのも無理はない。ようやく2000年以降の「IT革命」で、インターネットを用いた公的情報の提供が拡大し、最初は行政機関を中心に広がり、次第に法情報全般にも利用されるようになった。重要なことは、その間、法学者は国民の法情報へのアクセス環境を改善するよう積極的に働いたわけではなかったという事実である※1。法情報が身近にあり常にそれを「商売道具」としてきた研究者はまさに情報強者の立場にいるので、「法へのアクセス」がいかに重要なテーマであるかを自覚することに鈍感であったと言えるだろう。法令ばかりか、判例公開