ずいぶん昔から、ひょっとすると物心ついたときから、私はずっと1つの妄想にとりつかれている。 それは「幸福量保存の法則」という妄想である。 「幸福量保存の法則」とは何か。 それは、 「人類全体の持つ幸福の量と、不幸の量を全部足し合わせると、ちょうどゼロになる」 という考え方だ。 物理的、数学的に証明された法則ではない。 単に私がこれまで生きてきた中で学んだ経験則である。 私たちは、いったいどういったときに幸せを感じ、どういったときに不幸を感じるのだろうか。 私の感覚では、「何かと比べて良くなったときに」幸福を、逆に「何かと比べて悪くなったときに」不幸を感じ取る。 幸福や不幸は絶対的なものではなく、あくまでも何かとの比較において成り立つ、相対的なものだと思うのである。 どんなに贅沢な環境に置かれたとしても、やがて人はその贅沢に慣れ、ありがたみも薄れてしまう。 反対に、どれほど劣悪な環境に置かれ