本質病という非常に厄介な病気がある。 私は元患者であるが、いまだに後遺症が残っている。 ときおりぶり返す。 本質病とは、物事を 「本質的には結局……」 とか 「要約するとそれは……」 とか 何でもかんでも単純化するのが主症状である。 誰でも発症するが、学生時代に数学や物理や社会学と仲良しだった人が特に罹患率が高いとされている、根治の難しい病である。 罹患すると骨組みしか見えなくなるので「レントゲン症候群」とも言ってもよいだろう。 もちろんときには本質を探ることが必要な場合もある。病的でない場合もある。 「旦那に飯が不味いと言われた。どうして私の作る料理はこんなにも不味いのかしら」 そういう場合は料理が不味い本質を探ったほうがいい。いや、探るべきだ。 不味い味噌汁しか作れない人は、野菜炒めも作ってもどうせ不味い。魚なんか焼いた日にはとんでもないことになろう。 料理が不味いのは「料理のイロハ」