さて、久しぶりに新しい絵を描きました。 勝手に挿絵、その12。 今回は久生十蘭作「だいこん」より。 昭和22年1月から23年8月まで、雑誌「モダン日本」に連載された長編小説です。 青空文庫で読む あたしの手をひいて、方々へ連れて歩いてくれたシゴイさんのやさしい手に触るのも、これが最後だと思うと、そうやすやすとはやれないけど、まごまごしていると死んでしまう。あたしはそっと手をだした。シゴイさんが歎息するようにいった。 「お前はそんなやさしいところもある娘なんだな。ふしぎなやつだ」 シゴイさんの手があたしのほうへ伸びだしたまま曖昧に宙に浮いていたが、急に折れたように寝床の上へ落ちた。軍医長が椅子から立ちあがると、入口に立っていたひとにいった。 「看護長、カンフル」 物語は昭和20年8月15日の日本敗戦の日から、9月2日の降伏文書調印式までの数日間を、主人公である「だいこん」と呼ばれる17歳の娘