鹿島アントラーズで、ブラジル人監督の言葉は高井蘭童の言葉として選手に伝えられる。通訳、という仕事は想像よりもずっと試合の結果を左右するのだ。 鹿島アントラーズのベンチ前で、小柄な体躯を引っ張るように腕をあげ、大きなアクションと大きな声でピッチへメッセージを送る男がいる。 隣でその男を見守る監督は、時に自身以上に熱い素振りを見せる姿に動じる様子もない。男の仕事への高い信頼度が伝わってくる。 その男の名は高井蘭童(らんどう)。職務上の肩書は通訳。'95年に柏レイソルで初めてJリーグのクラブで仕事を始め、その後横浜フリューゲルス、大宮アルディージャを経て、2003年に鹿島アントラーズにやってきた。 代表監督に就任したジーコの通訳としても活躍した鈴木國弘氏は、1991年から10年近く鹿島に在籍し、メモを取ることなく、まるでジーコが乗り移ったかのように雄弁な語り口で知られる名通訳だった。 そんな大先