シュート体勢に入った相手が不意に目の前に現れたら、ゴールキーパーはまずお手上げだろう。まさに絶体絶命のピンチで、湘南ベルマーレの守護神・秋元陽太は驚くほど冷静に状況を見極めていた。 ■28歳、遅咲きのゴールキーパー ホームにサンフレッチェ広島を迎えた、5月30日のJ1ファーストステージの第14節。両チームともに無得点で迎えた、後半開始直後だった。 夜露に濡れたピッチがスリッピーな状態となっていたからか。左サイドからサンフレッチェのMF柴崎晃誠が送った低空クロスが、ワンバウンドした後に予想以上に勢いを増して伸びてきた。 クリアしようとしたベルマーレDF三竿雄斗の頭をかすめて、ボールは後方にいたFWドウグラスに当たってその前方へこぼれる。図らずも生まれた秋元との1対1の状況。27歳のブラジル人ストライカーは迷うことなく左足を振り上げている。 その瞬間、秋元は膨大な経験という引き出しのなかから、