フッサールの速記を解読 2022年7月、香港からクラッティゲンにカメラクルーがやってきた。イゾ・ケルン氏を主役に、「The Hanologist(中国学者)」というタイトルのドキュメンタリーシリーズを撮影するためだ。「これほど著名な学者が近所に住んでいることを、村の人たちはこのとき初めて知ったのです」。そう話すのは映画監督兼ディレクター兼プロデューサーのリュー・イー(劉怡)氏だ。イゾ・ケルン氏の全人生を描きたいとカメラクルーを連れてクラッティゲンを訪れ、さらにベルギーのルーヴァン大学にも足を伸ばした。彼の地では博士号を取ったばかりの若きケルン氏が働いていたのだ。 だがこの時ケルン氏が成し遂げた大業は、辛苦と勤勉、師弟愛、裏切り、そして橋を架けられないほど大きくなった亀裂の痛ましい物語に発展した。その中心にあるのが、ドイツ語版フッサール全集のうちの3巻だった。 エトムント・フッサールはドイツ