区 界 峠くざかいとうげ。 これほど、旅情をかき立てる峠の名を、他に知らない。 この峠は、岩手県は盛岡市と宮古市を結ぶ一般国道106号線最大にして唯一の峠である。 北上川に沿って南北へ連なる長大な平野部と、太平洋岸のリアスを基調とする険しい海岸線、そしてその中間を埋める広大な北上山地。 県としてはもっとも広い岩手県の地勢は、意外に簡単に説明できる。 そして、内陸平野部と沿岸部の間には幾筋もの街道が拓かれてきた。 それらの多くは、険しい北上山地を越える峠道であり、区界峠もそのうちの一つである。 国道106号線は、全長約100km。 その長い行程の全てが、区界峠越えといっても差し支えない。 盛岡を発すると一路東進。 梁川に沿って、緩やかに、そして徐々に勾配を極めながら登ること30kmと少し。 そこが、県都と下閉伊郡川井村の行政界にして、北上水系と閉伊水系の分水界である、区界峠である。 海抜75
ご覧の大カーブの先は、いよいよ県境の長大双子トンネルの片割れ「西栗子トンネル」である。 周りの風景は山岳そのもの、しかし道路上だけは都会のような喧騒に包まれている。 竣工した昭和41年ごろは、まだ環境保護の叫びは小さかったのだろうが、生態系を分断する巨大な帯である。 遂に目前に迫ったトンネル。 坑門に覆いかぶさる巨大な送風施設は、正にこの時代の長大トンネルのシンボルである。 はっきり言って、私などは胸がときめく。 幼少の頃、家族旅行で通った仙岩トンネルの威容が、私のトンネル好きの原点かもしれないのだ。 今日では技術の進歩により、地上にこのような巨大な施設を要さないので、こういった光景は今後再生産されないものだ。 道行く私たちを見下ろす坑門。 その姿は、なんとも誇らしげではないか。 実用上存在する物なのだが、何かそれ以上のコダワリを感じてしまう。 「俺がこの山をぶち抜いているんだ!!」 とい
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