万世大路工事用軌道は、おそらく正式なこの路線の名前ではないだろう。 しかし、我々は机上・実踏のいずれの調査においても、正式と言える名前に出会えなかったので、この名前をレポートのタイトルとして、採用した。 実際には単に、「工事用軌道」「工事線」などと呼ばれていたようである。 万世大路は、歴史的に見ても東北地方では最も著明な道路遺構である。 それは、現在の国道13号線、福島米沢間を隔てる、栗子峠越えの路であった。 日本中でも数少ない、正式に「大路」を冠された道の名は、開道間もない明治14年に、ここを巡幸なされた明治天皇により賜ったものである。 以降、万世大路はその名に恥じぬ主要な街道として賑わいを見せたが、昭和に入り交通の主役は人の足から車へと替わりつつあった。 昭和8年頃から、万世大路を国道13号線の新しい峠道として改良する大工事が行われ、以後、昭和40年代に現在の東西栗子トンネルのバイパス