今回紹介する大塩沢林道は、栃木県の西側南北軸の一部を構成する国道121号と、県央部から会津地方への近道であり観光幹線でもある国道400号を短絡する、やや長い峠越えの林道である。 この林道が存在する地域は、県内でも有数の観光資源(特に温泉)の宝庫であり、国際的観光地の日光から鬼怒川温泉、塩原温泉、那須山岳を連絡する線上にあると同時に、東北(会津)と関東を結ぶ最短線上にもあるため、奥羽山脈に連なる深い山地帯でありながら、昔から旺盛な“開道欲”に晒されてきたといえる。 多くの道が世代交代を繰りかえしてきた結果、本格的な廃道の多産地ともなっており、明治の三島街道(塩原街道)や尾頭明治道、昭和の塩那道路などは、いずれも塩原温泉を基点とした大廃道である。 そして大塩沢林道も、これら“死したる先駆者”の一列に加わるべき廃道だ。 鬼怒川水系(日光市:旧藤原町)と那珂川水系(那須塩原市:旧塩原町)を隔てる山