本連載では、米ビジネススクールで助教授を務める筆者が、海外の経営学の最新事情を紹介していきます。 さて、私は昨年『世界の経営学者はいま何を考えているのか』(英治出版)という本を刊行したのですが、そこで好評だったのが、リアル・オプションという考えを事業計画に応用することを紹介した章でした。 リアル・オプションの事業計画とは、「事業環境の不確実性が高いときには、慎重に計画をたててから巨額の投資をするよりも、まずは早く部分的に投資をして、その後で必要なら段階的に追加投資した方がよい」という考え方です。この方が、(1)事業環境が悪化した時のリスクを減らしながら、(2)他方で上ぶれ(=事業環境の好転)のチャンスを逃さないのです。 特に重要なのは(2)の点です。 不確実性のある事業環境では、人はそれを「リスク」と見なしがちです。例えば「今後の成長率は20%かもしれないが逆に3%だけの可能性もある」とい