なぜ、ただシンプルに「復興を支援しよう」とだけ言えないのだろう。テレビ、ラジオ、新聞雑誌インターネットといった媒体で流される東日本大震災支援の言葉には、信じてる、信じよう、頑張ろうという言葉が並び、さらには、ひとつになろう、手をとりあおう、空は繋がっている、と続くときもある。そして締めはニッポンコール。そういうものを見せられるたびに違和感と若干の気持ちの悪さを覚える。信じる、信じないというのは心や気持ちの問題だ。信じるも信じないも本人の自由。はっきりいえばこの国の力を信じる必要なんてない。必要なのは困っている人たちへの支援だ。人には思いやりの心というものがあって、今まさに被災地の人が悲しみとつらい状況のなかで暴動も起こさず秩序を守って示している。それは人間の持つ強さだ。ナニクソ。負けてられない。生きなきゃという。がむしゃらで。必死な。僕はそんな人間の強い力を信じて僕なりのやり方で支援してい
一瞬、耳を疑った。4月4日月曜日のことだ。何を言っているのかわからなかった。エイプリルフールは終わったんだぜベイビー、冗談は顔と上着だけ作業着を着た非常時コーディネートだけにしてくれよ、なんて軽口が出てしまいそうになる、そんな僕は食品会社の営業課長。 エイプリルフールは終わっていた。冗談でもなかった。営業、運営、総務の三部長は僕に「例の事業を売れ」と言った。ウチの会社、まあ他のところもそうだろうがいろいろ問題や個人的にムカつくこともあるがそれでもまだ身を置いている大きな理由のひとつ、やりがいのある仕事のひとつにお年寄りや障害のある人向けの食事、食材の提供がある。例の事業が指しているのはこの仕事だった。 理由は他の仕事と比較してコストと手間がかかりすぎる、設定した数字が出ていないということらしい。実際、関わった人間の努力で数字は出ていた。対予算120パーセント強。それを武器に反論したが聞き入
僕は食品会社の営業課長、顧客は一般企業や官公庁から老人ホームまで多岐にわたる。今日はある社会福祉法人との商談だった。その法人は特別養護老人ホームをはじめとしたさまざまな福祉施設を運営していて、代表者である理事長は地元では名士として通っている人物だ。 老人ホームの食事についての商談。何回かの面談を通じて、理事長の人柄や福祉に対する考えや熱意に触れるたびに「さすが名士だ」と感心したものだ。彼はいつもこんなことを言う。「この国の福祉は限られた予算でやっていて厳しい状況にある、ウチの施設の場合、入居者の方からいただいたお金や公的な補助金を職員一同無駄を切り詰めてやっているが余裕はない、頑張っているスタッフの待遇も良くしたいがままならない、私財を投じるにも限界がある」。彼は別れ際の僕にこう言って面談を締めるのだ。「福祉という事業の特性と実態をご理解いただいて」。<(価格を)勉強してくれ>というわけだ
前回(http://d.hatena.ne.jp/Delete_All/20100727#1280201283)のつづき。お年寄りや障害のある方向けの食事サービスは僕の会社の事業のひとつで、僕はこの仕事にやりがいを感じている。先日、ある高齢者施設で試食をおこなった際に、食べやすく加工した食品をみてウチの部長がゲロみたいで食べられないと言い放ったことに頭にきて、そんなにゲロゲロ言うなら本物のゲロ吐くまで追い詰めてやると僕は社長に上申したのだ。もう少し裏工作をするなど手はあったかもしれないけれど、性にあわないし、なにより社内で明るみにしたかったのだ。 聴聞会は三日、三回に分けておこなわれた。メンツは社長以下部長クラスと僕。一回目は僕があげた上申書の内容確認に終始した。僕の論旨は、福祉施設向けの食事サービスを営業する人間、監督する人間として部長は著しく適性を欠く人物である。現在、この事業は順調に
彼女とはツイッターで出会った。共通のフォロワーがひらいた飲み会で初めて顔をあわせた。二月の東京だった。彼女が、僕の日記(つまりここだ)が面白いと言うので、調子にのり、ああ、よく言われますと冗談のつもりで言い返すと変なものを見るような目をしていた。それが彼女との最初だった。そして、それが最後だった。彼女は死んでしまった。 訃報をきいてすぐに僕は彼女のツイッターのホームをひらいた。「つぶやき」は五月を最後に終わっていた。終わりのほうは体調不良をほのめかす発言の頻度が増えていた。僕はまったく気付いていなかった。彼女は、彼女の言葉、彼女に気付かないまま流れていく世界を眺めてどう思ったのだろう?そして、不安を感じさせる言葉のあいだあいだには、健康になりたい、元気な体が欲しい、という願いの言葉があった。 仲間たちと彼女の通夜に行った。ツイッターで出会い、インターネットの向こうで知らないうちに病に斃れて
スクリーンの深キョンドロンジョを舐めまわすように眺め、満喫し、さあ帰ろうとビールの残りを飲み干して、ふと隣を見ると先日僕とお見合いをした女性が座っていて驚いた。そうだそうだ。酒を飲んで深キョンのコスプレに没頭するあまり忘れてた。僕は二つ以上のことを頭に留められない。そして彼女は戦国時代好き西軍派、趣味コスプレ。 お見合い以来彼女からメールが送られてくるようになった。毎晩ほぼ午後十時に送られてくる。大半は「土手に花が咲いてましたぁー梵天丸もかくありたい(添付/花のついていない雑草)」「毘沙門天も攻め落とせなかった夜の小田原城の勇姿ですぅ(添付画像/一面ニ百万画素の闇)」というような嫌がらせメールで、最初は笑い飛ばしていたのだけれど、次第に精神が圧迫され、上下違うスーツを着てツートンカラー出勤をする、駅の便所で外人並みのウンコをしたあとで流すのを忘れ知らないオッサンに叱られる、という具合で生活
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