私はよく研究室の学生にこう言う。 「宗教なら神様がおっしゃったことが真実だ。でも、学問には真実というものはない。もし現在、正しいと思っていることが本当に正しいなら、学問の活動は終わりになる。 学問とは、一応、ここまでは「みんなが正しいと思われる」ところまで行く作業だ。だから学問には意見の相違というのはない。」 宗教は正しいことが決まっている。普通は教祖様がおっしゃったことが記録され、それが真実となる。だから「信じるか信じないか」の問題であって「合意できること」ではない。だから異なる教えの宗教を信じる人の間では話し合っても合意は出来ない。 宗教戦争が多いのはこれが原因しているのだろう。 それに対して学問には真実というものはない。絶対に確実と思われる学問的な知識もやがて覆される。もし現在の学問がすべて正しければ学問という活動自体が存在しないことになる。 学問というのは今を疑い、それ