さて、『数学文章作法』で説明されているのは、「正確で読みやすい文章を書く心がけ」 [3] である。それでは、どうすれば正確で読みやすい文章を書くことができるのだろうか。 著者の掲げる原則は非常に簡単なものである。それは、以下に記すたったひとつのさえたやりかただ。 読者のことを考える――この単純明快な原則に従って文章を書くことが、分かりやすい文章を書くことにつながるのだ。『数学文章作法』では、この原則を主題として、様々な変奏曲が示されている。読者のことを考えることを具体的に文章にどのように反映していけば良いかについて、この2冊は様々な角度から示している。例えば、『基礎編』で挙げられている具体的な心がけとして、以下のようなものがある。 読者のことを考えて、読者の期待通りの場所に期待通りのことが来るように読みやすい階層構造を作る(3.3節) 読者のことを考えて、読者が意味をよく理解できるように、