トマセロ(Michael Tomasello)が、「どんな証拠ならUG仮設を論駁できるのだろう」(What kind of evidence could refute the UG hypotesis?)という短い論文を書いている。これはStudies in Language 28 (2004)に掲載されたもので、本来、同誌に寄せられたヴンダーリッヒ(Wunderlich)の論文への注釈として書かれた。ただその内容を読むとヴンダーリッヒ論文の議論を正面から取り上げたというより、UG仮設を支持する他の研究者の主張をまとめて論評した体裁になっている。 事実この文章の末尾で、著者は自分の意見は単にヴンダーリッヒだけに向けられたのではなく、UG仮設のすべての主張者に対するものだと明言している。以下で、トマセロがUG仮設のどこに不備があると考えるかを見るために、彼の議論を筆者なりに整理してみたいとお