現代日本を代表する哲学者(阪大次期総長)による労働論。本書の内容を僕なりにまとめるならば、以下のようになるだろうか。 現代社会は、プロスペクティブ(前望的)な時間意識、および、効率性と生産性の論理が隅々まで深く浸透した《労働社会》である。 わたしたちはなぜ働くのか? しばしば耳にする問いである。多くの人びとが、生活するため、自分や家族の豊かで安らいだ将来の生活のためといった理由を持ち出すだろう。しかし、これは未来の幸福のために現在を貧しくする論理である。現在おこなっていること、進行していることは、目的実現のために必要なもの(手段)として消極的な位置づけしか与えられていない。現在の生の輝きはそこにはない。 現在の生の輝きを余暇に求めても、事態は本質的に変わらない。わたしたちは余暇の時間でも「効率よく遊ばなければ」という脅迫観念に囚われている。こうした余暇の「現在主義」的性格が典型的に表現され
![鷲田清一『だれのための仕事』 - 乱読ノート ~出町柳から哲学の道へ~](https://cdn-ak-scissors.b.st-hatena.com/image/square/7a8888b136892a9f10f35b7604efd7da552fe70b/height=288;version=1;width=512/https%3A%2F%2Fimages-fe.ssl-images-amazon.com%2Fimages%2FI%2F51X8N0HEGGL._SL160_.jpg)