月桃(ゲットウ)という花が好きだ。沖縄本島や八重山諸島では、家の軒先や空き地に当たり前のように生えている雑草めいた植物である。花が出るときは細長く丸まって固く閉じた葉の先が次第にゆるみ、2列に並んだ蕾の房が出てくるが、ひとつひとつはらっきょうの甘酢漬けに似ている。先端がほんのりとピンク色に染まっていて、なんだかやけにセクシーだ。やがてじょうご型に開き、赤と黄のだんだら模様の唇弁をのぞかせる。葉からは爽やかな香りの精油が取れる。 世間様が移動する時期に動き回るのもお金がかかるし、ちょっとした旅行ならふつうの週末に有休をつけて三連休にするほうが何かと楽だ。ゴールデンウィークはどこにも行かなくてもいいかなと思っていたが、この狭い部屋で、二度寝とネットサーフィンの無限ループをどれだけ繰り返してしまうことかと考えると、ぞっとしないものがある。 連休のひと月前のある夜、酔っぱらった勢いで軒先の花々にわ