ずっと気になっているお店がある。 そのお店は鎌倉の海岸通りにある創業50年を超えるドイツ家庭料理の「シーキャッスル」。祖父の家から歩いていけるほどの距離にあるお店なので、子供の頃から気になっていたのだけど、そのわりに一度も足を運んだことはない。なぜか? 怖かったからだ。店の看板に描かれた熊のキャラクターが少々不気味で、日が暮れたあとなどはモンスターじみていて怖く見えたのもあるが、お店にいらっしゃるドイツ人マダムが辛口で恐ろしいと専らの噂だったからだ。 僕はもう不惑。いい大人だ。熊ちゃんへの恐怖などとっくに克服している。同時に、加齢とともに怖いものや痛いものを見かけると触れてみたくなるエム体質へと成長している。 妻と訪れた「シーキャッスル」は落ち着いた雰囲気に包まれていた。和独折衷の独特な店内には外国人の方が数人。思わずビビって「こんにちは~」、声が小さくなる。ドイツ人マダムが指差す窓際の席